千年社ベトナム

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episode-17

ハノイ、ロックダウン、カフェ、サブスク ...。
籠りっぱなしの 2021 年に思ったこと。

日本では、毎年年末にその 1 年を表す漢字一文字を「今年の漢字」として発表します。
2021 年は「金」でしたが、個人的には迷うことなく「籠」でした。
半世紀以上を生き長らえてきた人生の中で、これほど籠っていた年は今までありません。

一応これ 150 年ぐらい前まで日本で使われていた草書体の「籠」です。

2021 年は年始に一時帰国してたこともあって、引き籠り生活のはじまりはハノイに戻って早々の 2 週間ホテル隔離。
なんだかんだ言ってもホテルだし、それほど不快なことはないだろうと予想していたのですが、実際は毎日が恐怖でした。
まだベトナムが感染爆発していない時期だったこともあって、外国から入国したというだけで相当警戒されていたのだと思います。
担当のホテルマンに悪気はなかったと思いますが、完全隔離の部屋に何かを伝えに来る時、彼は決まっていつも 3 メートルほど離れた位置からドスの効いた大声で叫んでいました。
こっちはベトナム語が堪能ではないので、大声で叫ばれてもキョトンとしていて、そうするとすかさず同じことを繰り返し叫びます。
アメリカのテレビドラマ「24」のジャック・バウワーが「銃を前に置いて両手を頭の後ろに組め!」と銃を突きつけて続けざまに何度も叫んでいる感じ。
そんなやりとりが連日繰り返され、一応陰性証明を持って入国してるにもかかわらず、自分があたかも凶悪なテロリストであるかのような錯覚が 2 週間続きました。

その後自宅での 2 週間隔離も終え、なんとかお店が回り出した 5 月。
いよいよかき氷の季節がやってきたと思った矢先に人民委員会から店内飲食禁止措置が通告されます。
かき氷がメイン商品のありがとうカフェにとって店内飲食禁止は営業禁止のようなものです。
やむなくこの年最初の休業。
6 月末、ようやく営業再開できたのも束の間、7 月上旬にはあっという間に 2 度目の休業。
そしてそのままハノイはロックダウンに移行します。

人生初のロックダウン体験。
ハノイでロックダウンかあ ... とはじめのうちは昔苦手だったハノイロックスをあえて聴いたりする余裕がありましたが、ロックダウンが長引くにつれ、そんな心のゆとりもなくなっていきました。
食料品の買い出しだけが唯一許された外出でしたが、配布される買い物券は時間帯制限がなぜか朝 6 時から 8 時だったりして、いくら朝の早いベトナムとはいえこれは早すぎる、と思いながら、日本から送ってもらったインスタント食品でなんとかしのいでいました。
「咳をしても一人」。
日本には、短い語数で詩的な表現をする俳句という文化があります。これは、日本人ならだれでも知っている有名な俳句です。
この句を詠んだ尾崎放哉はその数ヶ月後に亡くなったと言います。
いつの間にか部屋に住み着いたヤモリに「俺たち決してひとりじゃないよな」と語りかけていた自分は、今思うといささか病んでいた気がします。
そんな中カフェのお客様から定期的にいただく生存確認の電話は本当にありがたく、心配をおかけして申し訳ないと思いながらも、これは来るべき独居老人生活のシミュレーション期間だと思って頑張ろうという気持ちだけは失くしませんでした。

10 月。晴れてロックダウンも終了し、その月の後半から営業を再開しました。
スタッフのみんなや常連さんたちの顔を見られることがこんなに嬉しいことなんだとあらためて思い知りました。
かき氷のシーズンはすでに終わっていましたが。
ロックダウン中でできなかった 2 周年の感謝イベントはクリスマスイベントと合わせて行おうと準備をはじめました。
どうやら政府もニューノーマルに方針転換するようだし、もう大丈夫だろうと。
そうして 12 月になり、Facebook でイベントの告知をしたまさにその日、今年 3 度目の休業となりました。
しかも今回の措置はハノイの中でもありがとうカフェがあるドンダ区だけ。
狙い撃ちされた気分で結局クリスマスもひとりで過ごすこととなり、そのまま 2021 年は終わっていきました。

「サブスクやりませんか?」と常連のユーチューバーさんに言われたことがあります。
ディズニーランドの年間パスのような感じで、ありがとうカフェの 2 階を気軽にスタジオとして使えたら嬉しいと。
その時は「ちょっと考えてみますね」とお答えしましたが、もしやっていたら 2021 年はお客様にとってずいぶん損な 1 年になっていたはずです。
ありがとうカフェの営業日数をあらためて数えてみると、2021 年は 137 日。
何もなければ 300 日くらいなので、例年の半分以上お店を閉めていたことになります。
今の時代、確かにサブスクリプション的なシステムは、売り手にとって極めて有効な飛び道具です。
実際これだけカフェが休業しながらも経営が成り立っていたのは、ありがとうカフェを運営する千年社ベトナムのインターネット部門がサブスク的にシステムやサーバの管理を行っていたからと言えます。
でもやはりサブスクは売り手と買い手、どちらにもちゃんとメリットがあってはじめて成り立つ仕組みだということをあらためて思いました。

もしまたロックダウンになったら ...。
その時はネット上でありがとうカフェを続けてみたいと思います。
実店舗は休業してもネット上でみんなが集える場所。オンラインありがとうカフェ。
考えてみたらありがとうカフェの本来の目的は日本文化とベトナム文化の交流で、これまでも日本語の勉強会やベトナム語の勉強会、日本語の歌をみんなで歌う会などを定期的に行っていました。

ベトナム語の発音は本当に難しい、毎週日曜みんなで発音練習しています。

これらは別に実店舗じゃなくてもお客様に喜んでもらえる要素なんじゃないかと。
そこでまた日本語を勉強しているベトナム人の方やベトナム語を勉強している日本人の方に集まっていただけたら、少なくとも自分はロックダウン中の大きな活力になります。
だからもちろん参加費無料のサブスクリプション。
もしお望みであればデリバリーで温かいコーヒーをお届けしますね。
こちらはすみません、3 万ドンになります。

ありがとうカフェにはハノイに常駐している日本人社員がいる。千年社ベトナムで IT、デザイン関係の仕事をしながらカフェのマネージメントもしている。ハノイ現地社員の報告でした。

To Be Continued

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